弊所では、企業が「人権デューデリジェンス」に取組むに際して、これまで数多くの企業のSDGs導入支援で得た知見を活かして、法律の専務職である弁護士の観点からサポートを提供しております。
以下の内容をご覧いただき、取組みのサポートをご希望される場合、ご連絡いただければ個別の事案に応じて対応させて頂きます。
人権の尊重が求められる背景
近年、各種技術が目覚ましい発展を遂げ、経済活動のグローバル化が急速に進展したことにより、企業活動が地球環境や人びとの生活に及ぼす影響が大きくなっています。
これまで、資本主義のもと企業が株主の利益を最優先に経営してきた結果、コーポレート・ガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令遵守)、サプライチェーン上の人権などが軽視されるとともに、環境破壊やそれに伴う人体への影響など様々な社会問題が顕在化してきました。
特に東西冷戦終結以降、先進国で企業のグローバル化が急激に進んだことで、途上国における強制労働・児童労働、環境破壊などが増加する傾向が顕著です。
2015年に国連で採択されたSDGsの内容にも組み込まれているように、企業は関係するあらゆるステークホルダー(消費者、労働者、顧客、取引先、地域社会、株主などの利害関係者)の存在を考慮し、環境・気候変動問題や人権尊重などに取組んでいかなければなりません。
以下で記載する世界の潮流をみても、労働者の基本的権利を含めた人権の尊重を謳う国際的な基準やガイドラインが定められるなどグローバル規模でのルールの整備が進んでいます。
2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」では、以下のとおり3つの柱が規定されていますが、そのなかに企業の役割が明記されています。
- 人権及び基本的自由を尊重、保護及び実現するという国家の既存の義務
- 特定の機能を果たす特定の社会組織として、適用されるべきすべての法令を遵守し人権を尊重するよう求められる、企業の役割
- 権利及び義務が侵されるときに、それ相応の適切で実効的な救済をする必要性
同原則は、それぞれの国において、「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」の策定を奨励しており、欧米諸国を中心にNAPの策定がなされていくなか、日本では2020年10月、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」 が公表されました。
これからの時代において企業が存続するためには、社会に存在するすべての人びとの人権に配慮した企業活動が必要不可欠になったといえます。
「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」について
「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」の策定及び実施を通じて目指すものとして以下の4つをあげたうえで、基本的な考え方として以下の5つを掲げています。
目指すもの
- 国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進
- 「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保
- 日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上
- SDGsの達成への貢献
基本的な考え方
- 政府、政府関連機関及び地方公共団体等の「ビジネスと人権」に関する理解促進と意識向上
- 企業の「ビジネスと人権」に関する理解促進と意識向上
- 社会全体の人権に関する理解促進と意識向上
- サプライチェーンにおける人権尊重を促進する仕組みの整備
- 救済メカニズムの整備及び改善
分野別行動計画として、以下の6つの分類で個別具体的な事項を課題として列挙しています。
労働(ディーセント・ワークの促進等)
- ディーセント・ワークの促進
- ハラスメント対策の強化
- 労働者の権利の保護・尊重(含む外国人労働者、外国人技能実習生等)
子どもの権利の保護・促進
- 身取引等を含む児童労働撤廃に関する国際的な取組への貢献
- 児童買春に関する啓発
- 子どもに対する暴力への取組
- スポーツ原則・ビジネス原則の周知
- インターネット利用環境整備
- 「子供の性被害防止プラン」の着実な実施
新しい技術の発展に伴う人権
- ヘイトスピーチを含むインターネット上の名誉毀損等への対応
- AIの利用と人権やプライバシーの保護に関する議論の推進
消費者の権利・役割
- エシカル消費の普及・啓発
- 消費者志向経営の推進
- 消費者教育の推進
法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)
- ユニバーサルデザイン等の推進
- 障害者雇用の促進
- 女性活躍の推進
- 性的指向・性自認への理解・受容の促進
- 雇用分野における平等な取扱い
- 公衆の使用の目的とする場所での平等な取扱い
外国人材の受入れ・共生
- 共生社会実現に向けた外国人材の受入れ環境整備の充実・推進
そのうえで、人権を尊重する企業の責任を促すための取組みとして、ア 国内外のサプライチェーンにおける取組及び「指導原則」に基づく人権デュー・デェリジェンスの促進、イ イ.中小企業における「ビジネスと人権」への取組に対する支援を示しています。
企業が尊重すべき人権の分野
企業が配慮すべき主要な人権及び企業活動に関連する人権に関するリスクとしては、以下が想定されている。
人権に関する取組みが事業活動に与える影響
企業が人権への配慮を怠ったことでステークホルダーの権利を侵害する事態が生じると、企業活動が立ち行かなくなるリスクを抱えてしまうことが容易に想定されます。逆に、企業が人権デューデリジェンスを実施し、各種の施策をとることで企業活動にポジティブな影響を及ぼすこともあります。
人権に関する取組の充実によるポジティブな影響
- 新規顧客の開拓・既存顧客との関係強化
- 採用力・人材定着率の向上(≒採用コストの減少)
- 生産性の向上
- ブランド価値の向上
- 株式等価値の上昇
人権に関する取組の不足によるネガティブな影響
- 商品等の差別的要素や欠陥による販売停止・事業撤退
- 従業員離反による業務停滞・事業停止
- 既存顧客や政府との取引停止
- 不買運動の発生
- 罰金の発生
- 訴訟提起・損害賠償の発生
- 採用力・人材定着率の低下(≒採用コストの増加)
- ブランド価値の毀損
- 株価の下落
- ダイベストメント(投資の引揚げ)
企業による人権への取組み
国連指導原則11には、「企業は人権を尊重すべきである。これは、企業が他者の人権を侵害することを回避し、自らが関与している人権への負の影響に対処すべきことを意味する。」と記載されています。
そして、国連指導原則報告フレームワークでは、企業が人権尊重責任を果たすための行動基準として以下を明確に求めています。
- 人権尊重の方針を示すコミットメントの表明
- 以下に関する人権デュー・デェリジェンスの手続
人権への実際の及び潜在的な影響の評価
評価結果の統合、及び潜在的影響を防止または軽減するための措置
パフォーマンスの追跡
パフォーマンスの公開 - 企業が人権への負の影響の原因になったり、これを助長したりした場合、被害者の救済を提供または可能にする手続
企業による人権への取組の全体像
自社事業による人権への負の影響を防止・軽減する取組
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